触れることによる効果｜女性用性感マッサージsofre

触れることによる効果｜女性用性感マッサージsofre

触覚は脳の中の感情を司る部分に刺激を与え、ストレスを緩和させたり気持ちを落ち着かせたりするオキシトシンというホルモンの分泌を促します。

皮膚は自己と環境との境界としての役割をもっている。
だから、境界としての皮膚の感じ方は「自己意識」と深い関わりをもつ。皮膚の感覚を剥奪してしまうと、自己の意識は身体の外に出ていったり、曖昧になってしまうのである。
また皮膚感覚も心の状態を反映している。たとえば摂食障害の患者は皮膚感覚に鈍いことや、発達障害や認知症の患者も皮膚感覚に問題があることもわかってきた。
摂食障害の患者に、皮膚に密着するボディスーツを着用してもらい、皮膚感覚を覚醒させてみると、その期間は脳の島皮質（身体イメージや自己意識に関わる部位）が正常になり、体重が顕著に増加するが、着用をやめると、体重は元通りに戻ってしまったという実験結果もある。
ギリシャの聖医ヒポクラテスも触れて病を治したとされ、エジプトの壁画にも触れて病を治す場面が描かれており、中国の黄帝内経にも按摩の記述がみられる。
このように触れることの癒し効果は、経験的には太古の昔からわかっていたが、そのメカニズムの詳細については最近の研究によってようやくわかってきたばかりである。

【皮膚は露出した脳】
皮膚は「露出した脳」、あるいは「第3の脳」といわれる。
生理学からみると、皮膚と脳の間には共通点が見つかっている。
最近の研究では、皮膚にも脳にあるものと同じ物質さえも見つかっている。
最近では、自閉症スペクトラム障害や摂食障害の患者は、胎児の時に羊水による皮膚の C 触覚線維への刺激が不足していたことが原因である、との説も考えられている。
皮膚の感覚は脳の体性感覚野で処理されるが、その占める面積は脳内で非常に大きな割合を占めている。だから、脳に与える影響は非常に大きなものとなる。
皮膚は微細な刺激については脳での判断を必要とせず、皮膚が独自の情報処理を行っている可能性についても明らかになってきた。
触れることがそもそもなぜ様々な影響をもたらすのか。
第1の身体レベルでは、ほとんどの哺乳類もそうだが、人間の赤ちゃんも生まれてすぐは体温の調節ができない。
だからしっかりと養育者に抱かれて体温を保持する必要がある。それがそもそものスキンシップの役割だといえる。
第2の情動レベルでは、スキンシップは赤ちゃんにとっては、とても安全で快適な刺激である。だからスキンシップをされることで心も温かくなり、優しい気持ちになれる。
スキンシップをされることで温かい気持ちになれるためには、赤ちゃんの時の養育者とのスキンシップ次第であることも研究からわかっている。
それは脳内で身体の「温かさ」と心の「温かさ」を感じる部位の間で、神経の連絡が密になるからである。
第３の認知レベルでは、スキンシップをしてくれる人というのは、赤ちゃんにとっては不快を取り除いて、慰撫を与えてくれる人である。
だからそのような人に特別な信頼関係の絆、すなわち愛着の関係を築くようになるのである。
こうして生き延びる手段として、スキンシップの役割は階層的に進化して高度になっていったのである。

【触覚線維の役割】
皮膚にある触覚受容器は 4 種類ある。いずれもツルツル、ネバネバといった刺激の特徴を解析するもので、これを識別機能という。
最近、これらとは別の機能をもつ触覚が発見された。こちらは細い C 線維を伝って脳に届くため、C 触覚線維とよばれている。その役割は、触覚によって快や不快、安心感や嫌悪感といった情動を喚起させる役割を持つ。
そのため『官能機能』ともよばれ、進化的にもっとも古い触覚線維である。
C 触覚線維は、脳では自己の意識や感情と係る「島皮質」や「前帯状皮質」、さらには自律神経の中枢である視床下部にも届いている。
だから、自分自身の情動を感じる役割も果たし、自律神経のバランスを整えて、自己の存在感といった自己意識を高めるはたらきもしている。
さらには共感という他者の情動を知覚する機能まで持っている。
どのようにすると C 触覚線維を興奮させることができるか。
1 つは、C 触覚線維は触れるものの柔らかさが重要である。柔らかいもので触れることが大切なのである。
また C 触覚線維は、触れる速さがとても大事である。
およその速さの目安としては、肩から手の甲までを、5 秒間かけて触れていく。このとき、手の平全体を使って、少し圧をかけて触れることが大切である。
適度な圧がないと、効果が得られないからである。
相手の背中に秒速 5㎝ほどでゆっくりと触れてみると、抑うつも不安も顕著に低下した。
逆に手を動かす速度を、速すぎたり遅すぎたりすると、自律神経の交感神経が優位になって、覚醒水準が上がってしまった。
別の研究によると、手の平に関しては、早さが早い刺激に対しても快を感じる特徴がある。
だから触れる側の人は手を速く動かしても手で気持ちよさを感じるため、マッサージなどではどうしても速い速度で手を動かしてしまいがちであるが、触れられる相手のことを考えると、やはりゆっくりした速度で触れる方がよいのである。
人に触れられると触れられた人の体温はどう変化するのだろうか。
触れる部位は、プライベートな部位はパブリックな部位に比べて反応が大きく、同性よりも異性の方がさらに反応が大きいようだ。

【オキシトシンの役割】
人に触れると、脳ではもう 1 つ重要なはたらきが起こる。
快適な触覚刺激が脳に伝わると、視床下部ではオキシトシンという神経伝達物質が分泌される。オキシトシンは、もともとは産褥期の女性の体内ではたらく女性ホルモンとしての役割があることがわかっていた。
たとえば子宮の収縮を促して、陣痛を促進したり、産後の射乳を促すといったはたらきである。
それ以外にも脳で神経伝達物質としてはたらく作用があることがわかってきた。
母子の絆や、信頼や愛情といった感情などの社会的行動に複雑に関わっているものである。人間もそうだが人間以外の動物では特に、他の個体に対して本来もつ正常な警戒心を一時的に緩め、接近行動を可能にすることで交配や集団の維持を促す働きがある。
オキシトシンはもともと、ヘビなどの刺激が恐怖の対象かを判断する扁桃体といった古い脳で働く神経伝達物質であったのが、哺乳類になって乳腺や子宮ができて、平滑筋に働くように転用されたと考えられている。
オキシトシンが分泌されると、副交感神経が優位にはたらくようになり、人は心身ともにリラックスし、ストレスを軽減させることができる。
最近の研究では、心臓にもオキシトシンの受容体が豊富に存在していることがわかっており、オキシトシンによって血圧が下がり心拍も下がるのである。
だからオキシトシンはストレスから心臓を守る働きも持っているともいえる。
オキシトシンは脳内ではセロトニン神経の活動を活性化する。セロトニン神経は、不安や興奮した状態から、元の安定した心の状態に戻すはたらきをしている。
特にうつ病の患者はセロトニンの分泌が少ないといわれているため、セロトニンを増やすことで症状を改善できる。
合成オキシトシンを薬として体内に取り込み続けると、次第に内因性のオキシトシンの分泌が悪くなることも知られている。
また合成オキシトシンは代謝されやすいため、その効果はせいぜい 1 時間程度しか持続しない。
そのため、マッサージなどの方法で内因性のオキシトシンを分泌させた方が、長期的にはより良い効果を期待できるのである。
触れるケアをすると、触れられる側のオキシトシンの分泌が高まるのはもちろんのこと、触れる側（ケアする人）のオキシトシンの分泌も高まるのである。
ケアする側は、多少なりとも相手のことを慮りながら触れるであろう。
「ここが気持ち良さそうだ」、「この痛みが良くなるように」などの気持ちである。
オキシトシンの分泌にはこのように、単なる触覚刺激があれば良いのではなく、相手のことを慮るという優しさや思いやりといった心理面も重要なのだ。

【弱い力と強い力～快の大切さ】
いずれの触れ方も、ゆっくりとした速度で、皮膚に圧をかけながら触れることに効果があると述べた。
それは決して、強く揉みほぐすような触れ方ではない。
物理学の法則とは逆に、生体にとっての刺激は、弱い刺激は強い刺激よりも、より大きな影響を与える可能性である。
強い刺激を与えた場合、生体の防御機能がはたらく結果、反作用の力でその影響を排除しようとする。すると結果的に、強い刺激から受ける影響は小さくなる。
弱い刺激であれば、有害性や副作用はなく、生体はそれを受け入れるため大きな影響を及ぼすのである。
一般的に、強く押し揉みほぐすように痛みを与えるような刺激を与えると、脳内では脳内麻薬様物質といわれる物質が出る。それは痛みを一時的に抑えるはたらきをしている。
この場合の気持よさは、身体にとっては何も積極的な意味はない。むしろ、もみかえしなどの副作用があることもあるからである。

【タッチングの力を活かす触れ方】
繊細な皮膚への触れ方というのは、やはり細心の注意を払って行われなければならない。現在の時点でエビデンスがある効果的な触れ方について、下記の 5 ポイントある。

【秒速 5 センチメートルのストローク】
C 触覚線維は秒速 5㎝で発火が最大になり、脳では快を感じる島皮質に到達する。またこの速度で触れると、自律神経の交感神経の働きが弱まり、副交感神経の働きが高まるため、リラックス効果も大きい。

【手掌全体で触れる】
人は嫌いな物や苦手な人に触れなければならない場合、指先だけで触れようとする。しかしそのように触れられた人は、自分を汚い物のように扱われたと感じ、尊厳が傷つき不快な気持ちになる。
これでは信頼関係も親密な関係性も築くことはできない。

【優しく圧をかける】
タッチケアをしても効果がみられない研究があるが、その場合、施術者の触れる手の圧が弱い可能性がある。手の平全体でしっかりと圧をかけて触れることが効果を高める大切なポイントである。

【あたたかい手で触れる】
人は温かい手で触れられると、安心して覚醒水準が下がる。その刺激は脳の島皮質に届き、心も温かくなる。
その結果、他者との距離が近づき、親密な関係が築きやすくなる。冷たい手の場合は逆である。

【触れるとき、離すときの手の角度】
触れるという行為は非常に繊細であり、相手のバウンダリー（境界）を侵害する行為でもある。そのため触れる瞬間は、飛行機が着陸するときのように、手首から少しずつ指先にかけて接触していく。
手を離すときも同様に衝撃を小さくするために、手首の方から指先にかけてゆっくりと離していくようにする。

【タッチングの効果をあげるために】
タッチングは、言うまでもなく心と体を含めたコミュニケーションである。しかし侵襲性が高く、相手のバウンダリー（境界）を容易に侵害する行為でもある。
そのためタッチングを行う前には、「見つめ」、「話す」といったコミュニケーションを十分に行い、オキシトシンの分泌を促しやすい信頼関係を築いておくことが重要である。
また触れ始めは、肩や背中、腕といった身体の外側の抵抗の小さい部位から触れることも重要である。
これらの部位は、普段から人に触れられることがあり、侵襲性が低いからである。

【入力と出力としての皮膚の役割】
①皮膚は、触れて刺激を与える「入力」としての界面になっている。
②そのような刺激を受け取った皮膚は、それを脳に伝え、自律神経のバランスを整えたり、オキシトシンを分泌させたりする、すなわち健康な生体の活動を支えるための基礎となる「自然治癒力」を高める。
③すると自律神経や免疫系、ホルモンのはたらきで、全身の臓器や筋肉などの活動を健康にするように全身を整える。
④このように全身の末梢の器官のはたらきが整うことで、心も健康になる。「健全な精神は健全な肉体に宿る」といわれる所以である。
⑤そのような心のはたらきは皮膚に表れる。また、全身の臓器の状態も皮膚に表れる。「皮膚は内蔵を映す鏡である」といわれる所以である。このように考えると、
⑥皮膚は心や内臓の状態を反映した「出力」としての器官としても考える必要があることがわかるだろう。